鉄腕アトムのアニメ3作の違い|手塚治虫原作、見るなら1980年版

結論:鉄腕アトムのアニメは3作、最初に見るなら1980年版

手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』の物語をアニメにしたテレビシリーズは、1963年版・1980年版・2003年版の3作です(ほかに未就学児向けのアニメ『GO!GO!アトム』があります)。1963年版と1980年版は原作と同じく、天馬博士が死んだ息子の代わりにアトムを作るところから始まります。2003年版はその経緯を途中まで伏せていて、作られた時代も話数も、天馬博士の描き方も3作で違います。

最初の1作に選ぶなら、1980年版です。天馬博士がアトムを作り、サーカスを経てお茶の水博士と出会うまでを最初の3話で描いていて、原作の始まりに近い流れで見られます。手塚治虫自身が第1話と最終回を含む9話の脚本を書いた、手塚の存命中で最後のアトムのテレビシリーズでもあります。アトムの兄弟機にあたる悪役アトラスとの対決が9回に分けて入っていて、1話完結の話を見ながら、シリーズ全体の流れも追えます。

1963年版は日本で最初の長編連続テレビアニメで、白黒の193本。歴史として見る価値は大きいものの、全部を追うには長すぎます。2003年版は、天馬博士がなぜアトムを捨てたのかを全50話かけて明かしていく作りで、いまのアニメに慣れた人にはこちらが入りやすいはずです。

版放送本数向いている人
1963年版(白黒)1963〜1966年・フジテレビ系193本主題歌や白黒のアトムを懐かしみたい人、アニメの歴史を知りたい人
1980年版(カラー)1980〜1981年・日本テレビ系52本原作に近いアトムを最初に1作見たい人
2003年版『ASTROBOY 鉄腕アトム』2003〜2004年・フジテレビ系50本連続した物語として見たい人

鉄腕アトムの映像版一覧

テレビシリーズの3作のほかにも、『鉄腕アトム』は実写ドラマ、劇場版、アメリカ製のCG映画、前日譚、幼児向けアニメ、リメイク漫画のアニメ化と、形を変えて何度も映像になっています。

公開・放送作品形式アトムの声
1959〜1960年鉄腕アトム(実写版)実写テレビドラマ(実写)
1963〜1966年鉄腕アトム(1963)テレビアニメ・白黒・193本清水マリ
1964年鉄腕アトム・宇宙の勇者劇場版(テレビ版の再編集)清水マリ
1977年ジェッターマルステレビアニメ・27本(アトムの続編企画から生まれた別作品)マルス役に清水マリ
1980〜1981年鉄腕アトム(1980)テレビアニメ・カラー・52本清水マリ
2003〜2004年ASTROBOY鉄腕アトムテレビアニメ・カラー・50本津村まこと
2009年ATOMアメリカ・香港合作のCG映画上戸彩(日本語吹替)
2017年アトム ザ・ビギニングテレビアニメ・全12話(前日譚)アトムは登場しない
2019年〜GO!GO!アトム未就学児向けのテレビアニメ-
2023年PLUTONetflixのアニメ・全8話日笠陽子

このうち、手塚治虫の原作の物語をアニメにしたと言えるのは、テレビシリーズの3作と劇場版です。2019年からテレビ東京系で放送された『GO!GO!アトム』は、手塚プロダクションが作った小さな子ども向けの作品です。『アトム ザ・ビギニング』はアトムが作られる前の時代を描いた別の漫画が原作で、『PLUTO』は浦沢直樹によるリメイク漫画のアニメ化です。

1963年版:日本で最初の長編連続テレビアニメ

どんな作品か

1963年1月1日に始まった、アトムの最初のテレビアニメです。虫プロダクションが作り、フジテレビ系で1966年12月31日まで、4年にわたって放送されました。白黒・24分の193本で、手塚治虫公式サイトは「日本最初の長編テレビ用連続アニメ」と紹介しています。

人気は高く、公式サイトによると最高視聴率は40.7パーセント。アニメハックの記事のように40.3パーセントとする資料もありますが、どちらにしても40パーセントを超えていたことは変わりません。

谷川俊太郎作詞・高井達雄作曲の主題歌「鉄腕アトム」は、この1963年版のために作られた曲です。「空をこえて」で始まるあの歌です。1980年版でも、編曲を変えて同じ曲が使われています。

安く作るための工夫

毎週30分のアニメを、どうやって毎週間に合わせたのか。豊島区の鉄腕アトム展の紹介によると、手塚治虫は当時ふつうだったアニメの作り方を見直し、手間を徹底的に省く新しいやり方を考えたそうです。

手塚がテレビ局に「1話55万円でいい」と言って、安い制作費の始まりを作ったという話もよく知られています。ただ、作家の中川右介によると、55万円と言ったのは事実でも、実際に虫プロに支払われていたのは1話155万円でした。55万円だけを取り出して「手塚のせいでアニメ業界が安くなった」とする話は、数字の面では言いすぎです。

原作との違い

第1話「アトム誕生の巻」は原作と同じく、事故で息子のトビオを失った天馬博士が、トビオにそっくりなロボットのアトムを作る話から始まります。

違いが出るのは、回を重ねてからです。193本は原作の話の数よりずっと多く、中盤からは原作にない回が増えていきます。たとえば第56話「地球防衛隊」は、もともと手塚治虫の別の漫画『ナンバー7』の設定をアトム用に移したものだと、公式サイトの劇場版のページに書かれています。

最終回は第193話「地球最大の冒険の巻」で、脚本と演出は手塚治虫本人。太陽の異変で人間が地球を離れ、ロボットだけが残された地球が舞台です。アトムが太陽へ向かったまま終わるので、アトムは死んだのかという疑問が残る結末です。原作の最終回と読み比べた答えは鉄腕アトムの最終回に書いています。

いまから見るなら

193本を全部見るのは現実的ではありません。第1話と最終回、それに興味のある回を選んで見るのが向いています。

バンダイチャンネルでは見放題で配信されていますが、第125話・第127話・第139話は欠番で、配信されていません。テレビ埼玉でも2025年11月から、毎週土曜の夕方に全193話を4年かけて放送しています。2025年11月の開始時点では、放送のあとTVerでも配信されていました。

1980年版:手塚治虫が作り直したカラー版

どんな作品か

1980年10月1日から1981年12月23日まで、日本テレビ系で放送された2作目です。制作は手塚プロダクションで、カラー・24分の52本。手塚治虫は原作・構成・メインキャラクターとしてクレジットされ、脚本や絵コンテ、原画にも名前があります。手塚の存命中に作られた、最後のアトムのテレビシリーズです。

主題歌は1963年版と同じ「鉄腕アトム」を、三枝成章が編曲し直したもの。アトムの声も1963年版と同じ清水マリ、アトムの面倒を見るお茶の水博士の声も同じ勝田久です。

原作との違い

公式サイトは1980年版を「旧作のリメイクですが、エピソードひとつひとつの内容も現代的にアレンジされています」と紹介しています。物語の始まりは原作に近く、第1話で天馬博士は、交通事故で死んだ息子トビオの名前を、作っていたロボットに付けます。

このロボットのトビオ(のちのアトム)は、第2話でロボットサーカスの団長の手に渡り、第3話「ロボットサーカス」でアメリカのサーカスに連れて行かれます。原作では天馬博士がアトムをサーカスに売りますが、1980年版では団長にだまされて連れて行かれる形です。団員のキャシーが彼を逃がし、お茶の水博士と日本へ帰るときに「アトム」と名付けます。

いちばん大きな違いは、アトラスです。アトラスは1963年版の第26話にも出てくる悪のロボットですが、1980年版では生まれから作り直されました。ワルプル・ギス伯爵という男がアトムの設計図を盗み、「オメガ因子」という悪の心を加えて作った複製ロボット、という設定です。

項目内容
アトラスの生まれアトムの設計図の複製に、オメガ因子を加えて作られた
対決の回「アトム対アトラス」として第2・5・9・18・26・29・33・38・43話の9本
最後の対決第43話「アトム対アトラス・9 アトラスよ永遠に」
最終回第52話「アトムの初恋」(脚本:手塚治虫)

同じ設計から生まれて、善と悪に分かれた兄弟の対決。1話完結の話が続くなかで、この9本が全体を貫く話になっています。公式サイトも、善と悪の対立をシリーズとして9本入れたことを、この版の特徴に挙げています。

1980年版を最初に勧める理由

天馬博士による誕生、サーカス、お茶の水博士との出会いという原作の始まりに近い流れを、最初の3話で見られます。そのうえで、1話完結の回のあいだにアトラスとの対決9本が入るので、52本を通して見ても話がばらけません。

52本という長さは、1963年版の4分の1ほど。手塚が脚本を書いた回も9話あり、原作者がアトムをどう描き直したかったのかが、3作のなかでいちばんよく分かります。

2003年版『ASTROBOY 鉄腕アトム』

どんな作品か

2003年4月6日から2004年3月28日まで、フジテレビ系の日曜朝に放送された3作目です。ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、手塚プロダクション、電通、フジテレビが作り、カラー・24分の50本。

原作では、アトムが生まれたのは2003年4月7日です。朝日新聞は当時、その「誕生日」を記念して前日の4月6日から放送を始める、と報じていました。初回の視聴率は11.2パーセント(ビデオリサーチ・関東地区)で、フジテレビは日曜朝のアニメとしては高い数字だと説明していました。

原作との違い

いちばん大きな違いは、アトムの生まれを最初に見せないことです。第1話「パワーアップ」でアトムを目覚めさせるのは、お茶の水博士。天馬博士は第2話から、アトムを試す謎の人物として出てきます。

アトムがトビオだった頃の記憶を取り戻すのは、第6話「アトラス誕生」。第7話で、お茶の水博士が、アトムは天馬博士の息子トビオの代わりに作られて捨てられたのだと打ち明けます。原作なら最初の数ページで分かることを、2003年版は謎として引っ張ります。

アトラスの設定も違います。徳川財閥の総帥が、死んだ息子ダイチを再現してほしいと天馬博士に頼み、その結果生まれたロボット。1980年版のような「アトムの複製」ではありません。

最終回は第50話「最後の対決」で、科学省を占拠した天馬博士と、アトムが向き合います。なぜ天馬博士はアトムを捨てたのかが、最後の数話で明かされます。原作の名作で、PLUTOのもとになった「地上最大のロボット」も、第17話「地上最強のロボット」と第18話「プルートゥは死なず」の前後編で入っています。

主題歌とアトムの声の交代

旧主題歌は使われず、主題歌はZONEの「true blue」などの新曲になりました。当時のスポーツ報知によると、番組のホームページに届いた100件以上の意見のうち、約3分の1が主題歌についてのものでした。報知は旧主題歌を権利の関係で流せないと伝え、フジテレビは「新生アトムなので、主題歌も新しいものにした」と説明していたそうです。

アトムの声も、清水マリから津村まことに替わりました。お茶の水博士は3作続けて勝田久です。

2003年版が向いている人

天馬博士とアトムの関係を、50話かけて1本の話として描いた版です。1話完結のアトムより、謎が少しずつ解けていく連続ものが好きな人なら、この版から見ても困りません。

ただし、原作を読んでいる人には、天馬博士の過去を謎として引っ張る前半がもどかしく感じるはずです。原作を知っているなら、1980年版を先に見たほうが楽しめます。

鉄腕アトムのアニメ3作の違いを比べる

項目1963年版1980年版2003年版
色白黒カラーカラー
本数193本52本50本
制作虫プロダクション手塚プロダクションソニー・ピクチャーズほか
アトムの生まれ第1話で描く第1話で描く第6〜7話で明かす
アトラス第26話に悪のロボットとして登場アトムの設計図の複製。9本の対決が続きものの筋になる徳川財閥の息子の再現として天馬博士が作る
主題歌「鉄腕アトム」(谷川俊太郎作詞)同じ曲の編曲違い新曲(ZONEほか)
アトムの声清水マリ清水マリ津村まこと
最終回第193話「地球最大の冒険の巻」第52話「アトムの初恋」第50話「最後の対決」

違いがいちばんはっきり出るのは、天馬博士の扱いです。1963年版と1980年版は原作どおり、天馬博士がアトムを作るところから始まります。2003年版は天馬博士を物語の最後まで残る人物にして、父と子の話としてまとめ直しました。

そのほかの映像版

実写ドラマ(1959年)

最初の映像化は、実写のテレビドラマでした。1959年3月から1960年5月まで放送されています。配信はなく、2009年に発売されたDVD-BOXが中古で出回る程度なので、いまから見るのは難しい作品です。

劇場版『鉄腕アトム・宇宙の勇者』(1964年)

1963年版の第46話「ロボット宇宙艇」、第56話「地球防衛隊」、第71話「地球最後の日」の3話を中心に、第1〜3話の場面を加えて87分の映画にまとめ直したものです。公開時に「地球防衛隊」の全編と「地球最後の日」の一部がカラーで作り直されました。2025年3月には、全編をカラーにした特別版がNHK総合で放送されています。バンダイチャンネルでも見放題です。

ジェッターマルス(1977年)

1977年にフジテレビ系で放送された東映動画の『ジェッターマルス』は、手塚が原案と設定で参加し、主人公マルスの声もアトムと同じ清水マリでした。森晴路の『図説鉄腕アトム』によると、もとはアトムの続編として企画され、最終的に別の世界の新作になったそうです。

CG映画『ATOM』(2009年)

アメリカ・香港合作のフルCG映画で、日本では2009年10月10日に公開されました。テンマ博士の声はニコラス・ケイジ(吹替は役所広司)、アトムはフレディ・ハイモア(吹替は上戸彩)です。

興行は振るいませんでした。Box Office Mojoによると、6500万ドルの製作費に対して、世界の興行収入は約3989万ドル。日本では約86万ドルにとどまりました。制作したイマジ・スタジオは、2010年に閉鎖されました。原作とは別物のアメリカ映画なので、アトムを知るための1本には向きません。

アトム ザ・ビギニング(2017年)

2017年4月からNHK総合で放送された全12話のアニメです。原作はカサハラテツローの漫画で、手塚治虫は原案、ゆうきまさみがコンセプトワークを担当しました。若い頃の天馬博士とお茶の水博士が主人公で、アトムが生まれる前のロボット開発の話です。アトムそのものは出てこないので、3作のテレビシリーズとは別の作品として見てください。

PLUTO(2023年)

原作の一編「地上最大のロボット」を浦沢直樹と長崎尚志がリメイクした漫画『PLUTO』を、Netflixが全8話でアニメにしました。1話がおよそ1時間ある大人向けの作品です。原作とどこが違うかはPLUTOのアニメと原作の違いで詳しく比べています。

3作のあとに見るなら

テレビシリーズの3作を見たあと、大人向けのアトムの世界に触れたいなら『PLUTO』、アトムが生まれる前の話が気になるなら『アトム ザ・ビギニング』です。どちらも手塚以外の作者の漫画が原作なので、3作とは別の話として楽しめます。

アニメを見て原作も読みたくなったら、電子書籍で読めます。版ごとの違いと値段は手塚治虫の電子書籍はどこで読める?にまとめました。手塚治虫がアニメで何を変えたのかは、手塚治虫はなぜすごい?でも書いています。

鉄腕アトムのアニメを見るには

2026年10月11日の時点で確かめた配信先です。配信は入れ替わるので、契約の前に各サービスで確かめてください。

作品見られる場所
鉄腕アトム(1963)バンダイチャンネル、dアニメストア(どちらも見放題)。テレビ埼玉で放送中
鉄腕アトム・宇宙の勇者バンダイチャンネル、dアニメストア(見放題)
鉄腕アトム(1980)バンダイチャンネル、dアニメストア(見放題)
ASTROBOY鉄腕アトムdアニメストア(見放題)
アトム ザ・ビギニングdアニメストア(見放題)
PLUTONetflix
実写版(1959年)配信なし(2009年発売のDVD-BOXのみ)

3作のテレビシリーズと劇場版をまとめて見たいなら、dアニメストアで足ります。1980年版は2013〜2014年に期間限定生産のBlu-ray BOX(上下巻)が出ましたが、いまは中古が中心です。ほかの手塚作品のアニメの配信先は手塚治虫アニメはどこで見れる?にまとめています。

参考