三つ目がとおるの和登さんと写楽の関係|手塚治虫の漫画で結ばれるか

結論:和登さんは写楽の「保護者」で、三つ目の写楽の止め役

『三つ目がとおる』の和登千代子(わとちよこ)、通称「和登さん」は、主人公・写楽保介(しゃらくほうすけ)の同級生で、ガールフレンドです。

写楽はふだん、額の第三の目をばんそうこうで隠していて、幼児のように甘えん坊です。この写楽にとって、和登さんは守ってくれる保護者です。ばんそうこうがはがれて三つ目になった写楽は、天才的な頭脳で世界征服をたくらみます。こちらの写楽にとって、和登さんは口うるさい相棒です。

手塚治虫公式サイトのキャラクター紹介は、和登さんを「絆創膏を貼った写楽にとっては保護者、三つ目写楽にとっては厄介でおせっかいなパートナー」と書き、「三つ目の写楽の暴走を止められる唯一の存在」とも紹介しています。

恋愛としての決着はつきません。和登さんが好意を寄せているのは三つ目の写楽のほうですが、公式サイトの全話のあらすじを見る限り、告白や交際に進む話はありません。連載の最終話「スマッシュでさよなら」は、和登さんが年上の男子に一目惚れして写楽から離れる話で、二人の関係が片づかないまま連載が終わります。

写楽保介はどういうキャラクターか

写楽は中学2年生です。かつて高い知能と文明を持ちながら滅ぼされた「三つ目族」の生き残りで、日本の中学校に通っています。

額の第三の目にばんそうこうを貼っているあいだは、幼い子どものような性格です。学校ではいじめられがちで、泣き虫で、何も知りません。ばんそうこうをはがすと三つ目族の知能が目を覚まし、超能力を使い、人間の文明を敵視する攻撃的な性格に変わります。同じ少年の中に、守られる子どもと、世界を相手にする悪の天才が同居している設定です。

写楽は、養父の犬持(けんもち)医師から、ラーメン屋を営むヒゲオヤジに預けられて暮らしています。

第三の目について、手塚治虫は漫画全集『三つ目がとおる』13巻のあとがき(文庫全集7巻に再録)で、インドや東南アジアの偶像から思いついたと書いています。ばんそうこうで隠した理由は「マスクにアクセントをつけるため」でした。手塚プロダクションは公式サイトで、写楽にはいじめられっ子だった手塚自身の少年時代の憧れが重ねられていると説明しています。

和登千代子はどういうキャラクターか

和登さんは写楽のクラスメートです。お寺の娘で、厳しく育てられています。気が強く、空手の名手で、自分のことを「ボク」と呼ぶショートカットの女の子として描かれます。

第1話「三つ目登場」では、いじめられる写楽を見ていられなくなった和登さんが、助けに入って味方になります。公式サイトの作品紹介も、和登さんを「いじめられがちな写楽の唯一の味方」と書いています。

三つ目の写楽が起こす事件には毎回巻き込まれ、遺跡の調査にもついていきます。手塚プロダクションは、男勝りなのに女っぽさもある和登さんを、『リボンの騎士』のサファイアの現代版だと評しています。

和登さんはほかの手塚作品にも顔を出しています。『ブラック・ジャック』の「小うるさい自殺者」(1977年)には、「千代子」という役で出てきます。

「写楽」と「和登」の名前の由来

二人の名前は、シャーロック・ホームズとワトソン博士から取られています。

  • 写楽保介(しゃらくほうすけ):シャーロック・ホームズ
  • 和登千代子(わとちよこ):ワトソン博士

和登さんのワトソン由来は手塚治虫公式サイトに書かれていて、写楽のホームズ由来は、復刊ドットコムが出した『三つ目がとおる《オリジナル版》大全集』の紹介文に書かれています。

ホームズとワトソンなら、天才と、その横で振り回される常識人の組み合わせです。三つ目の写楽が謎を解き、和登さんがその横で振り回されながらも止め役になる。二人の関係は、名前の時点で決まっていたと読めます。

二人の関係はどう動くか

和登さんの好意は、ばんそうこうの写楽と三つ目の写楽とで向きが違います。

写楽の状態写楽の性格和登さんの立場
ばんそうこうを貼っている幼児のよう。いじめられっ子守ってやる保護者
三つ目になっている天才で攻撃的。世界征服をたくらむ好意を寄せる相手で、暴走を止める相棒

公式サイトの作品紹介は、和登さんが「三つ目になった写楽に好意を持っている」と書いています。守ってあげたいのはばんそうこうの写楽で、惹かれているのは三つ目の写楽。和登さんの気持ちは、同じ少年の二つの顔のあいだで分かれています。

ばんそうこうも和登さんの役目です。いじめられる写楽を見かねて、和登さんがばんそうこうをはがし、三つ目にして反撃させる場面があります(「グリーブの秘密」編)。「地下の都」編では、約束して貼り直すのも和登さんです。三つ目の写楽を表に出すかどうかを、和登さんが握っている場面がたびたびあります。

関係が動く主な話

公式サイトのあらすじで、二人の関係がはっきり動くのは次の話です。収録巻は、講談社の手塚治虫文庫全集(全7巻)のものです。

話『週刊少年マガジン』の掲載二人に起きること文庫全集
三つ目登場1974年7月7日号和登さんがいじめられる写楽の味方になる1巻
三つ目族の謎編1975年2月23日号〜5月25日号二人で琵琶湖の財宝探しに出かける1巻
グリーブの秘密編1975年6月1日号〜8月24日号和登さんが写楽のばんそうこうをはがし、三つ目にして反撃させる2巻
復活の谷1976年6月20日号和登さんが夢の中で、写楽にそっくりな少年ランギロアと結婚式を挙げる3巻
古代王子ゴダル編1977年古代の王子ゴダルの魂に体を乗っ取られた和登さんが、ノラ猫の体に入って自分の体を追いかける5巻
地下の都編1977年5月1日号〜7月10日号犬持医師が手術で第三の目を取ろうとするのを、和登さんが止める。写楽は約束どおり和登さんにばんそうこうを貼ってもらう6巻
スマッシュでさよなら1978年3月19日号和登さんが年上の男子に一目惚れして写楽から離れる(最終話)7巻

二人の距離がいちばん縮まるのは「地下の都」編です。第三の目を取ってしまえば、写楽は普通の少年になり、もう暴走することもありません。それでも和登さんは手術を止め、写楽は和登さんにばんそうこうを貼ってもらいます。公式サイトのあらすじは、この話で「2人の信頼は深まる」と書いています。和登さんは、三つ目を持ったままの写楽を選んだことになります。

「復活の谷」は、恋愛にいちばん近い話です。結婚式を挙げるのは夢の中で、相手も写楽本人ではなく、写楽にそっくりな古代の少年です。目覚めた和登さんは、写楽がその少年の生まれ変わりかもしれないと考えます。手塚治虫は二人の結婚を、夢と前世という遠回りな形で描いています。

最終回で二人はどうなるか

『週刊少年マガジン』の連載の最終話は、1978年3月19日号の「スマッシュでさよなら」です。

この話で和登さんは、2つ年上でテニスをしている駄盤(だーばん)に一目惚れして、写楽から離れていきます。ところが駄盤はたちの悪いプレイボーイでした。写楽は三つ目になり、不思議な機械を使って駄盤とテニスの試合をし、徹底的に打ちのめします。

公式サイトのあらすじは、写楽が駄盤を打ちのめすところまでです。二人が仲直りする場面は書かれていません。

最終回だからといって、二人の関係に区切りをつける話にはなっていません。和登さんが別の男子に惹かれ、写楽がその相手に仕返しをする、いつもの学園回の一つです。写楽と和登さんの物語に結末を求めて読むと物足りなく感じるはずですが、二人の関係はこの話でも最初から変わっていません。和登さんは写楽の手を焼かせ、写楽は和登さんのために三つ目になります。

版によって話の順番が違う

『三つ目がとおる』は版によって話を入れる順番が違います。講談社の手塚治虫漫画全集(全13巻)は発表順に収録しておらず、雑誌に載った第1〜6話は全集の7巻に入っています。いまの手塚治虫文庫全集では、7巻に長編の「怪鳥モア」編と「イカヅチ山が泣いている」「スマッシュでさよなら」が入っていて、最後の話が連載の最終話と同じです。

最終回を確かめたいなら、文庫全集の7巻を選んでください。

『三つ目がとおる』の連載と単行本

項目内容
掲載誌『週刊少年マガジン』(講談社)
連載期間1974年7月7日号〜1978年3月19日号
連載の形月1回の読み切りから始まり、第7話から毎週の連載に
受賞1977年、『ブラック・ジャック』とあわせて第1回講談社漫画賞
手塚治虫漫画全集全13巻
手塚治虫文庫全集全7巻(各935円〜1,023円、税込)
手塚プロダクション版の電子書籍全13巻(1冊330円、税込)

価格は2026年10月10日に、講談社とBOOK☆WALKERの商品ページで確かめたものです。

これから読むなら、手塚治虫文庫全集の全7巻が手ごろです。1巻に「三つ目登場」と「三つ目族の謎」編が入っていて、二人の出会いから読み始められます。文庫全集には、「文福登場」(1巻)、「給食」(3巻)、「猪鹿中学」「長耳族」(4巻)のように、漫画全集に入らなかった話も入っています(講談社の各巻の商品ページによる)。文庫全集と漫画全集の違いは手塚治虫文庫全集と漫画全集の違いで比べました。

電子書籍なら、手塚プロダクション版の全13巻があります。Kindle Unlimitedでは、2026年10月7日の時点で1巻だけが読み放題の対象でした(手塚治虫のKindle Unlimited対象)。どのストアで買うかは手塚治虫の電子書籍はどこで読める?にまとめています。

復刊ドットコムの『三つ目がとおる《オリジナル版》大全集』(全8巻)は、単行本に入らなかったページを200ページ以上収めた版です。ただ、2026年10月10日の時点では在庫切れでした。

アニメの和登さんは原作とどう違うか

『三つ目がとおる』は2回アニメになっています。

アニメ放送写楽の声和登さんの声
『悪魔島のプリンス 三つ目がとおる』1985年8月25日(日本テレビ系「24時間テレビ」のスペシャル)藤田淑子高嶋雅羅
『三つ目がとおる』(テレビアニメ、全48話)1990年10月18日〜1991年9月26日(テレビ東京系)伊倉一恵松井菜桜子

1990年のテレビアニメは、手塚治虫が亡くなったあとに企画された、初めての手塚漫画のアニメ化でした。公式サイトによると、原作には古代文明の考察と和登さんのお色気の場面がたくさんありましたが、テレビ版では小さな子どもが見ることを考えて、どちらも抑えたそうです。

和登さんの描き方でいちばん違うのは、このお色気の場面が抑えられたことです。原作の和登さんを知りたいなら、漫画を読んでください。

1990年のテレビアニメは、2026年10月7日の時点でU-NEXT、Prime Video、DMM TVで配信されていました。手塚作品のアニメ全体の配信先は手塚治虫アニメはどこで見れる?にまとめています。

手塚作品のなかで『三つ目がとおる』がどのくらいの位置にあるかは、手塚治虫の漫画おすすめランキングで書いています。

参考