鉄腕アトムの最終回|太陽へ消えたアトムは死んだのか(手塚治虫)

結論:「最終回」はアトムが太陽へ突っ込む1966年のアニメ

「鉄腕アトムの最終回」と言われてまず思い出されるのは、1966年12月31日に放送されたアニメ第1作の第193話「地球最大の冒険の巻」です。地球を救う装置を抱えたアトムが、太陽へ突っ込んで帰ってこない。脚本と演出は手塚治虫本人でした。

ただ、これでアトムの物語が終わったわけではありません。

手塚治虫はこのあと、太陽に突っ込んだアトムが助かる続きを漫画で何本も描いています。公式サイトの作品解説にも、アトムが宇宙人に拾われて「生きかえった」と書かれています。最終回だけを見ればアトムは死んだように見えますが、作者はアトムを死なせたままにしませんでした。

原作の漫画には、はっきりした最終回がありません。連載は1968年3月で止まっていて、同じ号で掲載誌の『少年』も休刊しています。

鉄腕アトムの「最終回」と呼ばれる話

アトムは漫画とアニメで何度も作り直されているので、「最終回」と呼ばれる話がいくつもあります。主なものを並べると次のとおりです。

作品最後の話発表・放送アトムはどうなるか
原作漫画(『少年』連載)火星から帰ってきた男の巻『少年』1968年1〜3月号北極海で壊れる。雑誌の休刊で連載が終わる
アニメ第1作(1963年版)第193話「地球最大の冒険の巻」1966年12月31日、フジテレビ系装置を抱えて太陽へ突っ込む
アニメ第2作(1980年版)第52話「アトムの初恋」1981年12月23日、日本テレビ系少女ロボットの足を自分に付け、生きたまま終わる
アニメ第3作(2003年版)第50話「最後の対決」2004年3月、フジテレビ系前話で復活し、生きたまま最終回を迎える

「最終回」「太陽」と一緒に調べられているのは、ほぼ1963年版の第193話のことです。

1963年版アニメの最終回「地球最大の冒険の巻」

どんな話か

太陽の黒点の異変で地球の気温が上がり、人間はみんなロケットで宇宙へ逃げていきます。地球に残ったのはロボットだけ、のはずが、このすきに地球を乗っ取ろうとする悪人がひとり残っていた。公式サイトのあらすじはここまでです。

この先は、2024年のマグミクスの記事によると次のような流れです。太陽の活動を抑える装置を積んだカプセルが、隕石にぶつかって軌道から外れてしまう。アトムはそのカプセルを抱えて、自分ごと太陽へ突っ込みます。最後はお茶の水博士(アトムを引き取って育てた科学者)が出てきて「『鉄腕アトム』はこれでひとまず終わります」と挨拶します。

アトムが抱えていった装置の呼び名は資料によって違い、公式サイトの「アトム二世」の解説では「核爆発抑制装置」と書かれています。

なぜここで終わったのか

人気が落ちて打ち切られたわけではありません。公式サイトによると、最高視聴率は40.7%に達しています。

終わった理由として、Wikipediaの「鉄腕アトム (アニメ第1作)」は2つ挙げています。アニメの輸出先だったアメリカでテレビのカラー化が進み、白黒の本作が売れにくくなったこと。スポンサーの明治製菓が番組の終了を望んだこと。

終わることが予告されると、テレビ局には続けてほしいという投書が殺到したそうです(マグミクスの記事による)。森晴路『図説鉄腕アトム』は、毎日新聞(1966年12月24日)に「鉄腕アトムが死んじゃう」という見出しの記事が載ったと紹介しています。

全193話を、主人公が太陽へ消える話で締めたわけです。お茶の水博士の挨拶が「ひとまず」だったのも、続きを描く余地を残したかったからだと読めます。

アトムは死んだのか:手塚治虫が描いた3つの続き

最終回のあと、手塚治虫は太陽に消えたアトムのその後を、少なくとも3つの作品で描いています。

作品発表アトムはどうなったか
サンケイ新聞連載の『鉄腕アトム』(単行本題『アトム今昔物語』)サンケイ新聞、1967年1月〜1969年2月宇宙人に修理される(新聞連載時の導入。単行本では削られたとされる)
アトム還る『小学四年生』1972年4〜9月号宇宙人に拾われ、より高性能なロボットとして生き返る
アトム二世『文芸春秋デラックス』1975年9月無事を知らせる信号が地球に届く。ただし地球へは帰れない

公式サイトの「アトム還る」の解説は、はっきり「生きかえった」と書いています。太陽に突っ込んだあと、アトムは鉄のかけらにくっついて宇宙を漂い、三つ目のルルル星人のロケットに拾われた、という筋です。

「アトム二世」はもっと寂しい続きで、アトムは誰かに救われたものの、地球には帰れないことになっています。

1963年版の最終回だけを見れば、アトムは死んだ形で終わります。けれども作者自身が「生きていた」続きを描いています。

アトムは死んでいません。

どの続きを正史と見るかは決められていませんが、少なくとも手塚治虫は、太陽の中で終わる結末を最後の答えにはしていませんでした。

原作漫画の最後の話

『少年』連載の最後は「火星から帰ってきた男の巻」

原作の『鉄腕アトム』は、光文社の雑誌『少年』で1952年4月号から1968年3月号まで連載されました。最後に載ったのは「火星から帰ってきた男の巻」(1968年1〜3月号)です。

公式サイトのあらすじによると、アトムは危険な男・ユダを人間のいない北極海へ連れていき、氷の上で争ううちに壊れてしまいます。話はそこで終わりではなく、遭難したユダが最後の力で体から電気を出し、助けを呼ぶ場面へと続きます。

この話は、物語を締めくくるために描かれた最終回ではありません。『少年』そのものが1968年3月号で休刊し、連載もそこで止まりました。原作に「最終回らしい最終回」が無いのはこのためです。

時系列で最後に来るのは『アトム今昔物語』

物語の中の時間で考えると、アトムの生涯を閉じる話は『アトム今昔物語』です。

アトムが事故で50年前の日本へ飛ばされ、自分が生まれる日まで過去で過ごす、という話です。公式サイトのあらすじも、アトムが天馬博士(アトムを作った科学者)によって再び生み出されるまでを描く話だと紹介しています。過去にいるアトムと、これから作られるアトムが同じ時代に重なるので、過去のアトムはどこかで消えなければなりません。

その消え方は、新聞連載と単行本で違うとWikipediaの「鉄腕アトム」の項は書いています。新聞連載では、アトムは新しい自分を起動させるために、自分から起動装置の火花に飛び込んで消えたそうです。朝日ソノラマの単行本で結末が差し替えられ、こちらではアトムは部品が古びて山奥で動かなくなり、最後は宇宙人の女性スカラが爆破します。

どちらでも、過去のアトムは消え、未来で新しいアトムが生まれる。原作でアトムの「最期」が描かれた話を挙げるなら、この作品です。

「アトムの最後」はどんな話か

題名から最終回だと思われやすいのが「アトムの最後」(『別冊少年マガジン』1970年7月号)です。

舞台はロボットが人間を支配するようになった未来で、博物館で眠っていたアトムが、ロボットに追われる若者・丈夫に起こされます。話の中心は丈夫と恋人ジュリーの悲劇で、アトムの死は描かれません。

手塚治虫は1976年の朝日ソノラマ版の単行本で、この作品を「陰惨でいやな気分になる」と書いたそうです(Wikipediaの「アトムの最後」の項による)。人間とロボットの立場が逆転した暗い短編で、手塚の怖い作品を集めた『手塚治虫恐怖短編集 科学の暴虐編』(講談社)にも入っています。最終回を知りたくて読むと肩透かしになりますが、アトムの世界の行き着く先を描いた話として読むなら、いちばん重い一本です。

1980年版と2003年版の最終回

1980年版「アトムの初恋」

1980年版は日本テレビ系で全52話。最終回の第52話「アトムの初恋」は、手塚治虫が脚本を書いています。

アトムが出会った少女ロボット・ニョーカの体には爆弾が仕込まれていて、悪人のリンドルフ博士がそれを起動させてしまいます。アトムはリンドルフ博士にニョーカを分解させ、残った足をお茶の水博士に頼んで自分の足と付け替えてもらいます。アトムは死なず、好きになった相手の一部を体に残して終わります。

手塚眞の著書『天才の息子』によると、最終回の冒頭には手塚治虫本人が語りかける実写の映像が流れ、撮影は手塚眞が担当しました。

2003年版「最後の対決」

2003年版『ASTROBOY鉄腕アトム』はフジテレビ系で全50話。最終回は第50話「最後の対決」です。

天馬博士が科学省ごと命を絶とうとし、アトムに「おまえは行け」と告げます。それでもアトムは、自分を作った博士を見捨てられません。前の第49話「アトム復活」で一度止まったアトムが修理されて戻り、最終回は生きたアトムが博士と向き合う話になっています。

主人公が太陽へ消えて終わったのは1963年版だけです。リメイク版の最終回は、どちらも生きているアトムを主人公に、ロボットと作り手の関係を描いています。

最終回を読む・見るには

漫画で読む

原作の最後の話と、最終回の続きを描いた作品は、講談社の手塚治虫文庫全集で読めます。どれも電子版があります。

読みたい話入っている巻定価(税込)
火星から帰ってきた男の巻(『少年』連載の最後)鉄腕アトム(9)990円
アトム今昔物語アトム今昔物語1,100円
アトム還る・アトム二世・アトムの最後鉄腕アトム別巻935円

値段は2026年10月時点の講談社の商品ページの表示です。

最終回の「その後」だけを知りたいなら、『鉄腕アトム別巻』1冊で足ります。アトムが生き返る話も、地球に帰れない話も、題名に「最後」とつく暗い短編も、この巻にまとまっています。

文庫全集とほかの版の違いは手塚治虫文庫全集と漫画全集の違いで、電子書籍のストア選びは手塚治虫の電子書籍はどこで読めるかで比べています。アトムの次に何を読むか迷ったら、手塚治虫の漫画おすすめランキングで16作を判定しています。

アニメで見る

2026年10月8日時点で、1963年版の第193話と1980年版の第52話は、バンダイチャンネルの見放題(月額1,100円)で見られます。バンダイチャンネルでは1963年版の第125・127・139話が配信されていませんが、最終回の第193話は見られます。

1963年版はdアニメストアにも全192話の表記で入っています。dアニメストアで配信していないのは第139話だけで、第125・127話は後日配信予定とされています。手塚作品のアニメ全体の配信先は手塚治虫アニメはどこで見れる?にまとめています。

浦沢直樹がリメイクした『PLUTO』の原作「地上最大のロボット」も、『鉄腕アトム』の一編です。アニメ版との違いはPLUTOのアニメと原作の違いで比べています。

参考