結論:迷ったら手塚治虫文庫全集の全12巻
手塚治虫の『ブラック・ジャック』は、何巻あるかの答えが版によって違います。最初に出た単行本で、巻数がいちばん多い少年チャンピオン・コミックス版は全25巻ですが、ほかに全12巻、全15巻、全17巻、全22巻の版があります。
これから買うなら、講談社の手塚治虫文庫全集(全12巻)を勧めます。冊数は全版で最も少ない12冊なのに、232話が入っています。全25巻のチャンピオン・コミックス版(234話)と比べて、冊数は半分以下で、話数は2話少ないだけです。雑誌に載った順に並んでいるので、話の流れと絵の変化を描かれた順に追えます。電子書籍なら1冊880円です。
安さを取るなら、電子の手塚治虫漫画全集版(全22巻、1冊330円)が最安です。ただし入っている話は219話で、文庫全集より13話少なくなります。
どの1版を買っても、全話はそろいません。3話はいま流通しているどの単行本にも入っておらず、残りの全話をそろえるには、版を組み合わせて計27冊が必要です。
『ブラック・ジャック』は全部で何話あるか
『ブラック・ジャック』は、『週刊少年チャンピオン』に1973年から1983年まで載った作品です。無免許の天才外科医ブラック・ジャックが、法外な手術代と引き換えに患者を救う1話完結の話が続きます。
番号の付いた話は全242話あります。定期連載は1978年の第229話で終わり、1979年から1983年にかけて読み切りが13本描かれました。番号のない増刊号の1本を加えて、全243話と数えるのが一般的です。
単行本では第179話「メス」が次の第180話「土砂降り」とひとつにまとめられているので、単行本で数える話は242話です。このうち3話は、いま流通しているどの単行本にも入っていません。
| 話 | 題名 | 単行本に入っていない事情 |
|---|---|---|
| 第28話 | 指 | 一度も単行本に入っていない。のちに第227話「刻印」として描き直された |
| 第41話 | 植物人間 | チャンピオン・コミックス第4巻の初期の刷りにだけ入っていたが、別の話に差し替えられた |
| 第58話 | 快楽の座 | 一度も単行本に入っていない |
3話とも、国立国会図書館が掲載号の『週刊少年チャンピオン』を所蔵していて、館内で読めます。なぜ単行本に入らなかったのかは、手塚治虫の封印作品で詳しく書きました。
この記事で「全話」と書くときは、この3話を除いた239話を指します。
8種類の版と収録話数
『ブラック・ジャック』の単行本は、コンビニ版やオンデマンド版を除くと、秋田書店・講談社・復刊ドットコムの3社から8種類出ています。
| 版 | 出版社 | 巻数 | 収録話数 | 並び順 | いま新品で買えるか |
|---|---|---|---|---|---|
| 少年チャンピオン・コミックス | 秋田書店 | 全25巻 | 234話 | 発表順ではない | 電子版あり |
| 手塚治虫漫画全集 | 講談社 | 全22巻+『鉄腕アトム』別巻1 | 219話 | 発表順ではない | 電子版あり |
| 豪華版 | 秋田書店 | 全17巻+オールカラー版 | 231話 | 発表順ではない | 中古のみ |
| 秋田文庫 | 秋田書店 | 全17巻+『Treasure Book』 | 17巻で231話 | 発表順ではない | 出版社のページに定価880円で掲載 |
| 手塚治虫漫画全集DX版 | 講談社 | 全22巻 | 219話 | 発表順ではない | 中古のみ |
| 新装版 | 秋田書店 | 全17巻 | 231話 | 発表順 | 出版社のページに掲載なし。中古で探す |
| 手塚治虫文庫全集 | 講談社 | 全12巻+『鉄腕アトム』別巻 | 232話 | 発表順 | 電子版あり |
| ブラック・ジャック大全集 | 復刊ドットコム | 全15巻 | 239話 | 発表順 | 品切れ |
収録話数は、Wikipediaの各話の収録表と、版ごとの収録をまとめた個人サイト「ブラック・ジャック通読カルテ」から数えたものです。『鉄腕アトム』別巻に入っている第64話は数に含めていません。
同じ全17巻でも、豪華版・秋田文庫・新装版の3つがあります。中古で「全17巻セット」を買うときは、どの版かを必ず確かめてください。
1つの版で最も多く読めるのは大全集
1つの版で収録話数がいちばん多いのは、復刊ドットコムの『ブラック・ジャック大全集』(全15巻)です。3話を除く239話をすべて収めた、歴代の単行本で唯一の版です。
判型はB5判で、雑誌のカラーページをカラーのまま再現し、扉絵や次回予告のカットまで入っています。手塚プロダクションが持っている原稿から作られていて、資料としての価値も最も高い版です。
ただし、1冊3,850円で、全15巻そろえると57,750円(税込)になります。2026年10月現在、公式ストアでは第1巻もセットも在庫切れで、新品では手に入りません。
手に入れるなら中古ですが、初めて読む人がここまで出す必要はありません。ほかの版で読んで、手元に残したくなってから探せば十分です。
何を優先するかで選ぶ版
初めて読むなら手塚治虫文庫全集
講談社の手塚治虫文庫全集は、全12巻で232話が入っています。1冊あたりの話数は全版で最も多く、12冊で済みます。
入っていないのは、3話のほかに「血がとまらない」「しずむ女」「水頭症」「最後に残る者」「魔女裁判」「壁」の6話と、『鉄腕アトム』別巻に回った第64話です。全話239話のうち232話が読めるので、初めて読むならこれで不足はありません。
雑誌に載った順に並んでいるのも、この版を勧める理由です。ブラック・ジャックの助手ピノコが登場する「畸形嚢腫」や、宿敵の安楽死医ドクター・キリコとの対決を、描かれた順に追えます。手塚治虫の絵が10年でどう変わったかも分かります。
文庫判なので、1冊が厚めです。電子書籍は1冊880円で、全12巻が10,560円でそろいます。
なお第64話「おまえが犯人だ!!」は、『ブラック・ジャック』の巻ではなく、文庫全集『鉄腕アトム』の別巻に入っています。
安く読むなら電子の手塚治虫漫画全集版
いちばん安くそろうのは、手塚プロダクションが出している電子版の『ブラック・ジャック』全22巻です。講談社の手塚治虫漫画全集と同じ22巻の構成で、1冊330円、全22巻で7,260円。文庫全集より3,300円安く済みます。
入っている話は219話で、文庫全集より13話少なくなります。「ふたりの修二」「パク船長」「ドラキュラに捧ぐ」など、23話(うち1話は『鉄腕アトム』別巻に収録)が入っていません。代表的な話はひととおり入っているので、まず読んでみたい人には十分な版です。
色を付けた電子版の「カラー特別編集版」(全31冊、1冊330円)もありますが、入っている話は漫画全集版と同じです。冊数が多いぶん、合計は高くなります。
紙の新刊でそろえるなら秋田文庫
紙でそろえたいなら、秋田書店の秋田文庫(全17巻、1冊880円)です。いまも出版社のページに定価のまま載っている版です。17巻で231話が入っています。
別冊の『BLACK JACK Treasure Book』(2008年、990円)には、文庫17巻に入らなかった「2人のジャン」「壁」「落下物」が入っています。文庫とあわせて18冊にすると、チャンピオン・コミックス版・漫画全集・文庫全集に入っていない「壁」まで読めます。
秋田文庫は発表順に並んでいないので、話の順番を気にする人には向きません。
チャンピオン・コミックス版は「何巻まで」の答え
「ブラック・ジャックは何巻まであるか」と聞かれたら、たいていの人が思い浮かべるのは秋田書店の少年チャンピオン・コミックス版、全25巻です。1974年から出た最初の単行本です。
電子版はBOOK☆WALKERで1冊473円です。全25巻で11,825円と、文庫全集より冊数が多く、値段も高くなります。
それでも、この版にしかない利点があります。234話が入っていて、文庫全集に入っていない話のうち5話が読めることです。次の章の組み合わせに使います。
全話そろえるには27冊
3話を除いた全話をそろえる組み合わせとして、ファンの間で知られているのが次の27冊です。「ブラック・ジャック通読カルテ」でも紹介されています。
| 買うもの | 冊数 | 足りない話を埋める役割 |
|---|---|---|
| 少年チャンピオン・コミックス 全巻 | 25冊 | 234話 |
| 秋田文庫 第17巻 | 1冊 | 「金!金!金!」「不死鳥」「おとずれた思い出」 |
| 『BLACK JACK Treasure Book』 | 1冊 | 「壁」「落下物」 |
チャンピオン・コミックス版に入っていない5話を、秋田文庫の第17巻とTreasure Bookで埋める組み合わせです。Wikipediaの収録表と突き合わせると、たしかにこの27冊で3話を除く全話がそろいます。
大全集が新品で手に入らないいま、全話を読みたい人にとっては現実的な方法です。ただし並び順は発表順になりません。話の順番を気にするなら、文庫全集で通して読み、足りない話だけをほかの版で補うほうが読みやすくなります。6話のうち「壁」は『Treasure Book』に、残る5話はチャンピオン・コミックス版に入っています。
版ごとに台詞が違う
同じ話でも、版によって台詞や絵が違うことがあります。
手塚治虫は新しい単行本を出すたびに手を入れていて、差別的とされた言葉は、どの単行本でも一部書き換えられています。Wikipediaの各話一覧によると、第46話、第67話、第153話は、書き換えで話の印象が大きく変わった回です。第153話は、抗議を受けて手術の内容を描き直し、題名も「フィルムは二つあった」に変わりました。
雑誌に載ったときのカラーページ・扉絵・予告カットまで再現しているのは大全集です。初めて読む人は、どの版を選んでも話の筋を追うのに困ることはありません。
手放すときと、関連する記事
全集の種類と、目的別にどれを選べばいいかは手塚治虫文庫全集と漫画全集の違いでまとめています。家にある古い版を売りたい人は、手塚治虫の全集の買取相場を見てください。
読み終えて、ブラック・ジャックがなぜ医師免許を持たないのかが気になった人には、ブラック・ジャックはなぜ無免許なのかも読んでみてください。

