鉄腕アトムの主題歌|作詞は谷川俊太郎、手塚治虫アニメの歌詞の意味

結論:作詞は谷川俊太郎、作曲は高井達雄

手塚治虫原作のテレビアニメ『鉄腕アトム』(1963年)の主題歌「鉄腕アトム」は、作詞が詩人の谷川俊太郎、作曲が高井達雄、歌が上高田少年合唱団です。手塚治虫公式サイトの作品ページにも、この3人の名前が載っています。

意外と知られていないのは、放送が始まったときには歌詞がなかったことです。最初の数か月は、メロディーだけの曲がオープニングで流れていました。歌詞はあとから付きました。

歌詞が歌っているのは、アトムの強さより先に、アトムの心です。3番まであり、どの番も、アトムの力や役目を歌う前に「心やさし」「心ただし」「心はずむ」と心のあり方を置いています。谷川の歌詞は、アトムを力の強いロボットより、やさしい心を持った子どもとして描いています。

項目内容
曲名鉄腕アトム
作詞谷川俊太郎
作曲高井達雄
歌上高田少年合唱団
使われたアニメ鉄腕アトム(1963年1月1日〜1966年12月31日、フジテレビ系、全193話)
その後1980年版は同じ曲を編曲して使用。2003年版は新曲で始まり、途中からZONEのカバーがエンディングに

最初は歌詞のない曲だった

作曲した高井達雄は、2018年の現代ビジネスのインタビューで、曲ができたときのことを話しています。

依頼は昭和37年(1962年)の秋、手塚治虫からの電話でした。翌朝までに3曲用意することになり、高井はそのうち1曲を、富士見台駅から池袋駅まで電車に乗っていた15分ほどで書いたそうです。

会議では、A案(いまの「鉄腕アトム」)に手を挙げた人は誰もおらず、B案とC案に何人かずつ手が挙がりました。それでも手塚が「私はAです」と言い、A案に決まりました。ただし、ワンクール放送して評判が悪ければ差し替える、という条件付きだったといいます。いま誰もが知っているあの曲は、危うく別の曲になるところでした。

1963年1月に放送が始まったとき、この曲には歌詞がありませんでした。高井の話では、そのうち担当者から「箱いっぱいに手紙が来ているよ」と連絡があり、楽譜はいつ売り出されるのか、という問い合わせだったそうです。差し替えの話は立ち消えになり、急いで歌詞を付けることになりました。

そこで手塚が作詞者として名前を挙げたのが、当時まだ若い詩人だった谷川俊太郎です。ハフポスト日本版によると、谷川本人も2018年のイベントで「手塚治虫さんが電話をかけてきて」頼まれたと話しています。

何話から歌詞付きになったかは、文化放送の番組で紹介された話では31話から、音楽サイトのTAP the POPでは10話くらいからと分かれています。作曲した本人が話しているのは「第1クールは歌詞なし」というところまでなので、話数はここでは決めません。

著作権は50万円で手放していた

ハフポスト日本版によると、谷川は同じ2018年のイベントで、この歌の印税を計算したら「年間1億円という数字になった」と話しています。そこで著作権を買い取ってもらうことにし、「50万円でどうですか」と言ったら、すぐ小切手が出てきたそうです。

谷川俊太郎は2024年11月13日に92歳で亡くなりました。nippon.comの訃報も、経歴の中でこの主題歌の作詞を取り上げています。

谷川俊太郎の歌詞は何を言っているのか

歌詞の全文は、j-lyricや歌ネットなどの歌詞サイトで読めます。ここでは中身を言い換えて紹介します。

3番まで、同じ形をくり返す

歌は3番まであって、最後にもう一度1番を歌います。どの番も、次の順に進みます。

  1. アトムがどこで何をしているか(あいだに「ラララ」が入る)
  2. 「アトム」への呼びかけ
  3. 「心〇〇」のあとに「ラララ」、そして「科学の子」
  4. アトムの力や役目をひとことで言って、「鉄腕アトム」で締める

番ごとの中身はこうです。

番場面心力・役目
1番空を越えて、星の向こうへ飛んでいく心やさし十万馬力
2番耳をすませ、目をみはる。「油断するな」と呼びかける心ただし七つの威力
3番町角や海の底で、人間を守る心はずむみんなの友だち

1番で空を飛び、2番で敵に気をつけ、3番で人を守る。番を追うごとに、アトムの居場所が遠い空から人間のそばへ降りてきて、最後は人間を守る役目に落ち着きます。

「心やさし」は電話で決まった

1番の「心やさし」には、作るときの話が残っています。

共同通信が紹介した書籍『うたのチカラ』によると、谷川が最初に書いたのは「やさしい心」でした。高井がメロディーに乗らないと電話で伝えると、谷川はしばらく考えて語順を入れ替え、「心やさし」にしたそうです。共同通信の記事では「心やさしい」と書かれていますが、歌詞は「心やさし」です。

この入れ替えで、「心」がメロディーの頭に来ました。2番の「心ただし」、3番の「心はずむ」も同じ形です。毎番、まず「心」と歌ってから、アトムのどんな心なのかを言う。聴く子どもが真っ先に耳にするのは、アトムの心のほうです。

「科学の子」は毎番出てくる

「科学の子」は、1番から3番まで毎回出てきます。アトムは天馬博士(亡くした息子に似せてアトムを作った科学者)が作ったロボットなので、文字どおりの意味は「科学が生んだ子ども」です。

この言葉の直前には、いつも「心〇〇」が置かれています。ロボットなのに人間の心を持ってしまったことは、原作のアトムがずっと抱えていた悩みです。谷川はそれを、毎番「心」と「科学の子」を並べて歌った、と読めます。

「ラララ」について谷川が話したこと

「ラララ」は各番に2回ずつ出てきます。TAP the POPの記事に引用された『うたのチカラ』で、谷川は「ラララ」について、言葉がうまくはまらないところをごまかしたと答えることがある、と話しています。ただ、話を面白くしている面もある、とも言っています。

同じ本では、「歌詞は詩よりも言葉が少なめのほうがいい」と考えていたとも話しています。TAP the POPの佐藤剛の記事によると、谷川は高井の作品集に寄せた文章で「歌は言葉の意味だけではないと学んだことも、アトムの歌からです」と書いたそうです。「ラララ」は、言葉を詰め込まないで、メロディーに歌わせた部分だと読めます。

1980年版・2003年版の主題歌

『鉄腕アトム』のテレビアニメは、1963年版のあと1980年版と2003年版が作られています。主題歌はそれぞれこうなりました。

版オープニングエンディング
1963年版鉄腕アトム(歌:上高田少年合唱団)公式サイトに記載なし
1980年版鉄腕アトム(編曲:三枝成章、歌:アトムズ)未来に向かって(作詞:手塚治虫、歌:アンク)。第14・30・45話はウランのテーマ(歌:ウランズ)
2003年版true blue(ZONE)→ Now or Never(CHEMISTRY meets m-flo)BOY’S HEART(藤井フミヤ)→ 鉄腕アトム(ZONEのカバー、スカパンク版とバラード版)

1980年版:同じ曲を編曲し直した

1980年版のオープニングは、谷川と高井の「鉄腕アトム」を三枝成章が編曲し直したもので、歌はアトムズです。詞とメロディーは1963年版と同じで、編曲はブラス中心だった1963年版からロック調に変わっています。

エンディングの「未来に向かって」は、手塚治虫本人が作詞しています。作曲は三枝成章、歌はアンクです。

2003年版:新曲で始まり、のちに旧主題歌が戻った

2003年の『ASTROBOY 鉄腕アトム』は、旧主題歌を使わずに始まりました。オープニングはZONEの「true blue」、エンディングは藤井フミヤが作詞・作曲した「BOY’S HEART」です。放送当時のスポーツ報知(2003年4月11日)は、番組のホームページに寄せられた100件以上の意見のうち、約3分の1が主題歌についてのものだったと伝えています。記事の見出しは「アトム主題歌なぜ使わない」でした。

その後、旧主題歌は形を変えて戻ってきました。2003年7月のミニアルバム『ASTRO Girlz & Boyz』で、ZONEとRun Time All Starsが「鉄腕アトム」をスカパンク調でカバーしています。同年10月にはZONEのシングル「僕の手紙」に、バラード版の「鉄腕アトム」が入りました。

ソニーミュージックは、この2つを10月から2003年版のエンディングに使うと発表しています。2003年10月5日放送の第26話からエンディングが替わり、明るい回はスカパンク版、しんみりした回はバラード版が流れました。

オープニングも同じ第26話から、CHEMISTRY meets m-floの「Now or Never」に替わりました。最後の2話(第49・50話)だけは、オープニングもエンディングも放送開始時の2曲に戻っています。

上高田少年合唱団の元の歌を聴きたいなら1963年版です。詞とメロディーが同じなら編曲違いでもかまわない、という人は1980年版でも聴けます。3作の違いは鉄腕アトムのアニメ3作の違いで比べています。

「アトムの子」は別の曲

「鉄腕アトム」の歌を探していると、山下達郎の「アトムの子」が一緒に出てきます。こちらは主題歌ではありません。

オリコンニュースによると、「アトムの子」は1989年に亡くなった手塚治虫へのトリビュートとして作られた曲で、1991年のアルバム『ARTISAN』に入っています。2025年10月には、この曲で初めてのミュージックビデオが公開されました。

ZONEの『ASTRO Girlz & Boyz』には、「鉄腕アトム」と並んで「アトムの子」のカバーも入っています。2つの曲を続けて聴きたいなら、このアルバムが手軽です。

主題歌を聴く・アニメを見るには

CDで聴く

上高田少年合唱団の歌を新品で買うなら、日本コロムビアの『昭和テレビまんが 名曲大事典100』(4枚組、2025年12月24日発売、10,000円+税)があります。1枚目の1曲目が「鉄腕アトム」です。手塚作品では、ほかに『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『海のトリトン』の主題歌も入っています。

アニメのオープニングで聴く

2026年10月24日の時点で確かめた、1963年版の見られる場所です。

見られる場所内容
dアニメストア見放題(月額660円・税込、ブラウザから入会した場合)。第139話は欠番で配信なし。第125話・第127話は後日配信予定
テレビ埼玉毎週土曜18:30から放送中。2025年11月から全193話を順に放送しています。放送後はTVerでも配信

1980年版を含むほかの版の配信先と、手塚作品のアニメ全体の配信先は、手塚治虫のアニメはどこで見れる?にまとめています。主題歌のあとに原作の結末まで知りたくなったら、鉄腕アトムの最終回も読んでみてください。

参考