手塚治虫の初版本の価値|値が付くのは1950年代までの単行本

結論:値が付くのは1950年代までの単行本。70年代以降の初版は数百円が中心

手塚治虫の初版本でまとまった金額になるのは、1950年代までに出た単行本です。赤本(戦後の大阪で出た安い描き下ろしの単行本)や、不二書房・東光堂・学童社から出た初期の単行本は、状態がよければ1冊数万円から数十万円で取引されています。いちばん上にあるのが1947年の『新宝島』で、まんだらけのオークションで720万円の落札記録があります。

1960年代から70年代のコミックスは、初版でもほとんどが1冊数百円から千円台です。『ブラック・ジャック』の少年チャンピオン・コミックスなら、1万円を超えるのは1巻の初版と5巻の帯付き初版ぐらいで、2〜4巻が数千円、6巻以降は数百円です。講談社の手塚治虫漫画全集は、初版でも単巻で数百円から2,000円台です。

家で古い手塚の本を見つけたら、まず奥付の発行年を見てください。1950年代までの本なら専門店に査定を頼む価値があります。1960年代以降のコミックスは、巻をそろえて売るほうが金額になります。ただし『ブラック・ジャック』の1巻の初版と、帯の付いた5巻の初版は、1冊でも専門店に見せる価値があります。

本の種類主な時期1冊あたりの目安
『新宝島』初版(育英出版)1947年720万円の落札記録(2022年)
不二書房・東光堂・学童社などの初期単行本の初版1948〜1950年代数万〜数十万円
『ブラック・ジャック』1巻の初版、5巻の帯付き初版1974〜1975年1万〜4万円(ヤフオク落札)
『ブラック・ジャック』2〜4巻の初版1974〜1975年数千円
『ブラック・ジャック』6巻以降の初版1975〜1995年数百円
『火の鳥』『鉄腕アトム』のコミックスの初版1960〜70年代数百〜1,000円台
手塚治虫漫画全集の初版(単巻)1977年〜数百円から2,000円台

価格は、2026年4月から10月までのヤフオクの落札額(送料別)と、2026年10月23日にまんだらけ通販で確かめた販売価格(税込、売り切れたものを含む)です。どちらも買う人が払った金額なので、店に売るときの買取価格はこれより低くなります。

手塚治虫『新宝島』の初版は720万円

『新宝島』は、1947年に大阪の育英出版から出た単行本です。酒井七馬が原作・構成、手塚治虫が作画を担当した本で、手塚治虫が全国に知られるきっかけになりました。

2022年5月7日、まんだらけの「LIVE大オークション」に出た初版が、720万円で落札されました。開始価格は300万円で、入札は39件。出品の説明によると、1947年1月30日発行のB6判192ページで、貸本屋を通っていない「極美」の本でした。

初版がここまで高いのは、確認されている本が数冊しかないからです。2002年の時点で現存が確かめられていたのは3冊で、まんだらけの出品説明によると、2021年7月に京都で見つかった本が5冊目だそうです。藤子不二雄Ⓐの自伝的な漫画『まんが道』に描かれて名前がよく知られていることも、高値の理由として報じられています。発行部数は4万部とも、手塚本人が話した40万部とも、80万部とも言われていて、正確な数は分かっていません。

同じ『新宝島』でも、次のものは初版の原本ではありません。

本出版値段の目安
4月の改訂版と、その後の重版育英出版(1947年4月以降)初版よりずっと安い。2013年にまんだらけは80万円くらいと話していた
完全復刻版小学館クリエイティブ(2009年)ヤフオク落札1,800〜6,980円
手塚治虫漫画全集『新宝島』講談社(1984年)初版でも500〜2,000円(ヤフオク落札)
文庫全集『新寶島 オリジナル版』講談社(2012年)定価770円の新刊

漫画全集版は、手塚治虫が1984年に描き直した別の『新宝島』です。2009年の小学館クリエイティブの本は、国立国会図書館の書誌に「原本: 育英出版昭和22年刊」と注記された復刻で、1947年の本ではありません。

育英出版の初版かどうかは、奥付で見ます。発行日が昭和22年1月30日で、奥付の題字が「寳」の字になっているのが初版です。4月の改訂版は奥付の題字が「寶」になっています。表紙の芯が硬く紙が白いのも初版の特徴ですが、4月の改訂版にも芯の硬いものがあるので、手ざわりだけでは決められません。手元の本がこの条件に合うなら、自分で値段を調べるより先に、まんだらけのような手塚作品を扱う専門店に見せてください。

1950年代までの単行本:数万円から数十万円

『新宝島』のあと、手塚治虫は大阪の不二書房・東光堂などから描き下ろしの単行本を出しました。1950年代には東京の学童社から『ジャングル大帝』の単行本も出ています。この時期の本は、貸本屋を通っていない本(古書店では「非貸本」と呼びます)で状態のよい初版なら、数万円以上の値が付いています。

2026年4月から10月にヤフオクで落札された主な本です。

本出版落札額
『ロスト・ワールド』地球編の初版不二書房(1948年)351,110円(送料込みの出品)
『来るべき世界』前編・後編の初版(非貸本)不二書房171,000円
『ピノキオ』初版(非貸本)東光堂152,000円
『吸血魔團』昭和29年版の初版(非貸本、元版は1948年)東光堂92,000円
『月世界の少年』初版(非貸本)東光堂51,000円
『ジャングル大帝』第2編の初版学童社(1952年)33,000円
『来るべき世界』前編だけの初版(非貸本)不二書房31,500円
『火星博士』昭和27年版の初版(非貸本、元版は1947年)不二書房23,000円
『有尾人』初版(貸本)不二書房12,200円

まんだらけ通販では、学童社の『ジャングル大帝』全2巻の初版セットに715,000円、不二書房の『地底国の怪人』初版に495,000円の値が付いていました。どちらも売り切れたときの値段です。

同じ題名でも、値段は状態と、そろっているかどうかで大きく変わります。『来るべき世界』は、前編・後編がそろった非貸本が171,000円、前編だけでは31,500円でした。不二書房の『ファウスト』は、まんだらけで函付きが385,000円、函のない本が49,500円です。『有尾人』の12,200円は、貸本屋で糸を通して綴じ直され、スタンプと書き込みのある本でした。

この時期の本で気をつけたいのが復刻版です。1980年に名著刊行会が『初版復刻 手塚治虫初期漫画館』を出していて、不二書房・東光堂・学童社や育英出版の『メトロポリス』などが当時の形のまま復刻されています。ヤフオクでは「昭和23年12月20日発行 初版復刻」と題名に書かれた『ロストワールド』が1,200円で落札されていました。

この復刻は多くが原本の奥付ごと複製されているので、奥付の日付だけでは原本かどうか決められません。復刻版は函に入って出ているので、函があることも原本の証拠にはなりません。1950年代の本らしいものが出てきたら、自分で決めずに専門店に見せてください。

1960〜70年代のコミックス:値が付くのは一部の巻だけ

ブラック・ジャック

少年チャンピオン・コミックスの『ブラック・ジャック』は、1974年5月に1巻が出ました。定価は320円です。家に残っていることが多い本ですが、初版で値段が上がるのは最初のほうの巻です。

巻ヤフオク落札(初版)まんだらけ通販
1巻(1974年5月)15,000〜28,000円5,500円
2巻4,320〜5,000円2,750円
3巻3,000円2,200円
4巻(1975年3月)-5,500円
5巻(1975年4月発売)帯付き38,500円帯付き6,600円、帯なし1,320円
6巻以降帯なしは1冊数百円が中心1冊308〜1,100円
全25巻の初版セット20,510〜20,955円38,500円

1巻はシリーズの最初の本なので、初版を探す人がいます。4巻は、初期の刷りにだけ第41話「植物人間」が入っています。この話はその後の版から外れて、いまはどの単行本でも読めません。ヤフオクでは、題名に「植物人間収録」と書いた出品が見られます。手元の4巻にこの話が載っているかは、目次を見れば分かります。外された事情はブラックジャックの封印回3話にまとめています。

5巻の38,500円は、帯の付いた初版に68件の入札が集まった結果です。帯の有無でまんだらけの値段も5倍違います。帯が残っているなら、捨てずに本と一緒に出してください。

6巻以降は、初版でも帯のない単巻なら1冊数百円です。帯付きで2,000円台になった例はありますが、25巻そろった初版セットでも2万円前後でした。最初の5巻を除けば、初版だからといって高く売れるとは考えないでください。

火の鳥

『火の鳥』のコミックスは、初版でも安い本です。虫プロ商事の「COM名作コミックス」版は、まんだらけで1冊220円から330円でした。ヤフオクでは全5巻の初版がまとめて1,000円で落札されています。朝日ソノラマ版も単巻の初版が1冊1,000円ほどで、全巻の初版セットでも8,675円でした。

『火の鳥』で高い値が付いたのは、あとから出た復刻版です。復刊ドットコムの『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』全12巻と特典画集の未開封品は、ヤフオクで124,456円まで上がりました。雑誌に載ったときの形で収めた版です。どの版に何が入っているかは火の鳥の全巻はどれを買うかで比べました。

鉄腕アトム・どろろなど

光文社カッパ・コミクスの『鉄腕アトム』は、昭和39年・40年の初版の単巻が700円から1,300円でした。巻をそろえると値が上がり、全32巻と別巻の33冊がすべて初版の非貸本は26,100円で落札されています。雑誌「少年」の付録だった小冊子のアトムは、1冊1,100円から5,650円が中心です。

ほかのコミックスも同じぐらいです。

本価格
『どろろ』(サンデーコミックス)全4巻の初版6,770円(ヤフオク)、7,700円(まんだらけ)
『ジャングル大帝』(小学館ゴールデンコミックス)全3巻の初版帯付き8,250円、帯なし3,850円(まんだらけ)
『0マン』(集英社)1〜7巻の初版14,600円(ヤフオク)
「手塚治虫漫画選集」(鈴木出版)の初版1冊1,000〜6,250円(ヤフオク)

『ブラック・ジャック』の1巻と5巻を除けば、この時期のコミックスが1冊で数千円を超えることはまれです。それでも全巻が初版でそろっていれば、1冊ずつ売るより何倍もの金額になります。

全集の初版:単巻ではほとんど上がらない

講談社の手塚治虫漫画全集(全400巻)は、初版でも単巻の値段はほとんど上がりません。まんだらけ通販では、漫画全集の初版の単巻が数百円から2,200円、文庫全集の初版で帯付きのものが660円から880円でした。

400巻を揃いで売るなら話は別です。ヤフオクでは「全巻初版」が2026年7月に162,000円で落札されています。ただ、同じ年の5月には同じく全冊初版の揃いが58,300円でした。どちらも入札は1〜2件で、同じ全巻初版でも値段が大きく開いています。ヤフオクに出すなら、最低落札価格を決めてから出してください。全集の売り方は手塚治虫全集の買取相場で詳しく書きました。

手塚治虫の初版の見分け方

東京都古書籍商業協同組合の「日本の古本屋」の用語集によると、「初版」には2つの意味があります。狭い意味では、その作品が最初に本になったときの最初の版の最初の刷り。広い意味では、文庫や全集のように形を変えて出た本の初版第1刷も初版と呼びます。この記事の値段も、その本の第1刷を指す広い意味の初版です。

どちらの意味でも、2刷以降は初版に入りません。用語集も「古書店では初版二刷は初版とは言わない」と書いています。奥付に「初版」とあっても、2刷・3刷なら古本の値段では初版に数えられません。

見るところは次のとおりです。

  • 奥付の発行日と刷数:「第1刷」か、発行日が1つしか書かれていないか。重版の本には「〇年〇月〇日 〇刷」が並びます
  • 定価:同じ本でも刷りによって定価が違うことがあります。東光堂の本は、まんだらけも「定価140円の再版」のように定価で刷りを区別しています
  • 貸本かどうか:糸で綴じ直してある、ビニールのカバーが貼ってある、見返しに貸出票が貼ってある本は貸本で、値段が下がります
  • 帯・函・付録:日本の古本屋の用語集は、帯が「ときには、本体より高値になる」と書いています。上の『ブラック・ジャック』5巻や『ファウスト』のように、帯や函の有無で値段は数倍変わります
  • 復刻版でないか:1950年代までの本は、1980年の名著刊行会版などの復刻版が原本の奥付ごと複製していることが多く、日付だけでは見分けられません

どこに売るか

1950年代までの本と、『ブラック・ジャック』の最初の5巻の初版は、手塚作品を扱う古書の専門店に出してください。まんだらけは宅配買取を受け付けていて、送料は送る側の負担です。初めて利用するときは本人確認の書類がいります。

大手の総合買取に出すのはやめてください。ネットオフの買取価格一覧では、1974年から1995年に出た新書版『ブラック・ジャック』全25巻が1冊10円か20円でした。初版かどうかで値段を分けていないので、1巻の初版でも同じ扱いになります。

1960年代以降のコミックスは、巻をそろえてヤフオクやまんだらけに出すのが、いちばん金額になる売り方です。1冊ずつでは数百円でも、全巻の初版セットなら『ブラック・ジャック』で2万円前後、『鉄腕アトム』で2万円台の落札があります。

まんだらけの宅配買取の案内では、ほかの店の値段シールは貼ったままだと減額になることがあるので、できれば丁寧にはがすよう勧めています。無理にはがしてカバーに跡が残ると、かえって値が下がります。

手塚治虫の直筆のサインや原画が出てきたときは、本とは別に扱います。まんだらけには真贋鑑定があり、申込料として55,000円(税込)を前払いします。これは鑑定料の前払いで、本物と鑑定されて時価が50万円以上なら、鑑定料は時価の1割に税を足した額になります。ヤフオクには「模写」と書かれたサインも多く出ているので、鑑定なしで値段を判断しないでください。

参考