火の鳥の全巻はどれを買う?手塚治虫の角川文庫・文庫全集・電子版

結論:紙なら角川文庫、電子書籍なら手塚プロダクション版

手塚治虫の『火の鳥』をこれから全巻そろえるなら、紙は角川文庫の新装版、電子書籍は手塚プロダクション版(全16巻)を選んでください。

角川文庫は、手塚治虫が最後に手を入れた形で『火の鳥』が読める版です。黎明編から太陽編までの12編が1〜12巻に入っていて、1冊968円、12冊で11,616円(2026年10月時点)。ただし電子版は出ていません(KADOKAWAの商品ページとBOOK☆WALKERで確認)。

電子で読むなら手塚プロダクション版です。1冊330円で、全16巻そろえても5,280円。中身は講談社の手塚治虫文庫全集と同じ系統で、文庫全集の電子版(全11巻・8,470円)より3,190円安く済みます。

角川文庫の13・14巻と、文庫全集の『少女クラブ版』は、12編より前の旧作や未完の原稿を集めた巻です。最初は12編だけ買えば足ります。

『火の鳥』でいま新品で買える版

『火の鳥』は、手塚治虫が1954年から1988年まで、掲載誌を変えながら描き続けた連作です。単行本は何度も出し直されていて、いま新品で手に入る主な版は次の4つです。

版出版社巻数中身の系統紙電子
角川文庫(新装版)KADOKAWA全14巻(本編は1〜12巻)角川書店版(手塚治虫の最終編集)1冊968円なし
手塚治虫文庫全集講談社全11巻+『少女クラブ版』1冊講談社の全集版1冊803〜1,023円1冊770円(『少女クラブ版』は660円)
手塚プロダクション版(漫画全集と同じ巻構成)手塚プロダクション全16巻+『少女クラブ版』1冊講談社の全集版新品はほぼ無く中古で探す1冊330円
カラー版手塚プロダクション全16巻全ページに色を付けたものなし1冊330円

値段は2026年10月時点で、紙はKADOKAWAと講談社の商品ページ、電子はBOOK☆WALKERの表示です。

角川文庫の電子版は、KADOKAWAの商品ページにも、KADOKAWAグループの電子書店BOOK☆WALKERにも見当たりません。角川文庫で読みたい人は紙で買うことになります。

手塚プロダクション版は、巻の分け方と中身が講談社の手塚治虫漫画全集(B6判)と同じ版です。紙の漫画全集は1997年に完結していて、新品の流通はほぼ無く、中古で探すことになります。

角川文庫と手塚治虫文庫全集の違い

巻の分け方

12編がそれぞれ何巻に入っているかは、版によって次のように違います。

編角川文庫文庫全集手塚プロダクション版
黎明編1巻1巻1・2巻
未来編2巻2巻3巻
ヤマト編3巻3巻4巻
宇宙編9巻3巻4巻
鳳凰編4巻4巻5・6巻
復活編5巻5巻7・8巻
羽衣編5巻5巻8巻
望郷編6巻6巻9・10巻
乱世編7・8巻7・8巻11・12巻
生命編9巻9巻13巻
異形編3巻9巻13巻
太陽編10〜12巻10・11巻14〜16巻

角川文庫と文庫全集で違うのは、宇宙編、異形編、太陽編の入っている巻です。

  • 角川文庫は3巻が「ヤマト・異形編」、9巻が「宇宙・生命編」
  • 文庫全集と手塚プロダクション版は、ヤマト編と宇宙編が同じ巻、生命編と異形編が同じ巻
  • 太陽編は角川文庫が3冊、文庫全集が2冊、手塚プロダクション版が3冊

描かれた順(発表順)に読むと、宇宙編はヤマト編のすぐ次です。文庫全集と手塚プロダクション版なら、巻の順に読むだけで発表順になります。角川文庫で発表順に読むときは、3巻はヤマト編だけ読んで、9巻の宇宙編へ進みます。そのあと4巻から8巻まで読み、9巻の生命編、3巻の異形編、10巻の太陽編の順に進んでください。

手間に見えますが、公式サイトのコラム(虫ん坊2016年12月号)によると、角川文庫の組み合わせは手塚治虫自身が組み替えたものです。コラムは手塚プロダクション資料室長だった森晴路氏の解説を引いて、角川書店から単行本を出すときに、それまでの版とは違う「ヤマト・異形編、宇宙・生命編」の組み合わせになったと紹介しています。発表順ではなくなりますが、いま新品で買える文庫で作者の並べ方のまま読めるのは角川文庫です。

中身の違い

巻の分け方より大きいのは、同じ編でもコマや台詞、話の運びが違うことです。手塚治虫は単行本を出すたびに『火の鳥』を描き直していました。

公式サイトのコラムによると、版は大きく2つの系統に分かれます。

  • 角川書店版(1986〜87年):手塚治虫が最後に編集した形。角川文庫が引き継いでいる
  • 講談社の全集版:1968年から虫プロ商事が出した単行本をもとに、手塚治虫が講談社の漫画全集のために編集した形。手塚治虫文庫全集もこれをもとにしていて、コラムは「もっとも多く流通しているスタンダードなバージョン」と呼んでいる

朝日ソノラマ(いまの朝日新聞出版)の単行本も、この全集版と同じ系統です。手塚治虫が手を入れた順は、雑誌掲載版、朝日ソノラマ版、角川書店版。角川書店版を出すとき、手塚治虫は望郷編と乱世編にもう一度手を入れたとコラムは書いています。

どこが違うのかは、Wikipediaの各編の解説に次のようにまとめられています。

  • 望郷編:シリーズでいちばん手直しが多い編で、雑誌掲載版も含めて比べると100ページ以上の違いがある。角川版では主人公ロミと夫ジョージの出会いの場面が冒頭に移されている
  • 乱世編:犬と猿の話が、講談社の全集版では最後に、角川版では冒頭に置かれている。主人公の弁太(べんた)と源義経の最後の場面も、版によって違う

12編の大筋は、どちらの系統でも同じです。作者が最後に決めた形で読みたいなら角川文庫、公式サイトがスタンダードと呼ぶ形で読みたいなら文庫全集か手塚プロダクション版を選んでください。

13・14巻と『少女クラブ版』

12編のほかに、『火の鳥』には連作の流れから外れた旧作と、途中で終わった原稿があります。

中身角川文庫文庫全集
エジプト編・ギリシャ編・ローマ編(『少女クラブ』1956〜57年)13巻『少女クラブ版』
最初の黎明編(『漫画少年』1954〜55年)13巻『少女クラブ版』
未完に終わった『COM』版の望郷編・乱世編14巻なし
映画『火の鳥2772』の絵コンテ、インタビューなどの資料14巻なし

13巻と『少女クラブ版』は、ほぼ同じ作品を集めた巻です。どちらも12編とは話がつながっていないので、12編を読み終えてから手に取れば十分です。

違いが出るのは14巻(別巻)です。途中で終わった『COM』版の望郷編と乱世編は、文庫全集には入っていません。いま新品で買える文庫で読めるのは、角川文庫の14巻だけです。途中で終わった望郷編・乱世編の元の形が気になったら、14巻を買い足してください。

値段を比べる

12編を全部そろえたときの値段です(2026年10月時点)。

版12編に必要な冊数合計13・14巻など旧作の巻も足すと
角川文庫(紙)12冊11,616円14冊で13,552円(全14巻セットと同額)
文庫全集(紙)11冊10,032円12冊で10,835円
文庫全集(電子)11冊8,470円12冊で9,130円(『少女クラブ版』は660円)
手塚プロダクション版(電子)16冊5,280円17冊で5,610円

紙の角川文庫と文庫全集の差は1,584円で、冊数も文庫全集のほうが1冊少なくなります。

電子は手塚プロダクション版がいちばん安く、文庫全集の電子版より3,190円安く済みます。冊数は5冊多くなりますが、漫画全集は1冊が文庫より薄いので、読む量は変わりません。

電子書籍はストアごとにセールやクーポンがあり、実際に払う額はここから下がることがあります。手塚作品の電子セールの傾向は手塚治虫の電子書籍はどこで読めるかにまとめています。

何を優先するかで選ぶ版

紙で手元に置くなら角川文庫の1〜12巻

角川文庫の新装版は、2018年6月から12月にかけて出ました。手塚治虫公式サイトの告知によると、カバーには虫プロ商事の「COM名作コミックス」版の表紙絵が使われていて、本文は読みやすいようにデジタルで修整されています。巻末には本編以外の16ページがあり、今日マチ子、しりあがり寿、諸星大二郎などの漫画家が描き下ろしたトリビュート漫画や解説が入っています。

KADOKAWAの商品ページでは全14巻セット(13,552円)も売られています。最初から14巻まで買う必要はありません。1〜12巻を読んで、もっと読みたくなったら13・14巻を足してください。

電子書籍なら手塚プロダクション版

手塚プロダクション版は、巻の順に読むだけで発表順になります。全16巻で5,280円と、どの版より安くそろいます。中身は文庫全集と同じ講談社の全集版の系統なので、角川文庫とは違う形で読むことになる点は覚えておいてください。

BOOK☆WALKERでは、書名が「火の鳥 1」のように巻数だけで、出版社の欄が「手塚プロダクション」になっているものがこの版です。BOOK☆WALKERには、同じ手塚プロダクションから全ページに色を付けた「カラー版」(全16巻・1冊330円)もあります。値段は同じなので、白黒で読みたい人は書名に「カラー版」と付いていないほうを選んでください。

冊数を減らしたいなら手塚治虫文庫全集

文庫全集は、12編を11冊に収めた版です。冊数が少ないぶん、本棚でも電子書籍の一覧でもすっきりします。

紙なら1冊803〜1,023円、電子なら1冊770円(『少女クラブ版』は660円)です。手塚プロダクション版より高くなりますが、文庫全集でほかの手塚作品もそろえている人は、判型と背表紙をそろえられます。

文庫全集とほかの全集の違いは、手塚治虫文庫全集と漫画全集の違いで比べています。

お金をかけずに読むなら

電子版のある文庫全集と手塚プロダクション版は、電子書店で試し読みができます。1巻の黎明編を試し読みして、絵柄が合うかどうか確かめてから買うのが無駄のない方法です。

紙の本なら、図書館で借りる手もあります。無料で読める公式の手段は手塚治虫の電子書籍はどこで読めるかで一覧にしています。

中古で買うときに確かめること

角川文庫の『火の鳥』には、1992年に出た旧版(全13巻)と、2018年の新装版(全14巻)があります。中古の「全13巻セット」は旧版で、新装版の14巻(別巻)は入っていません。

旧版の13巻にもギリシャ・ローマ編は入っています。12編を読むだけなら旧版でも困りませんが、新装版の巻末にある解説やトリビュート漫画は付いていません。見分けるときは、出品の説明にある巻数か、ISBNを見てください。新装版の1巻は978-4-04-106630-0、旧版の1巻は978-4-04-185101-2です。

読み終えた全集を手放すときの相場は、手塚治虫全集の買取相場を見てください。

買ったあとに読む順番

最初に読むのは黎明編、次に未来編です。角川文庫と文庫全集なら1巻→2巻、手塚プロダクション版なら1・2巻→3巻です。

なぜその順番がいいのか、1冊だけ試すならどの編か、作中の時代順に読むのはいつがいいかは、火の鳥の読む順番で詳しく書きました。

参考